「メーカーの技術職は安定」を、公的データで検算する

筆者は製造業の技術職ではありません。本記事は厚生労働省が公表している統計を確認・整理したものです。 このページに広告は掲載していません(広告掲載方針)。

「メーカーの技術職は手に職だから安定」「製造業なら食いっぱぐれない」という説明があります。

厚生労働省の統計で確認したところ、「製造技術者」というひとつの区分の中で、水準がまったく違いました。

製造技術者(開発) 1.81倍 有効求人15,132件 ÷ 有効求職8,357人
製造技術者(開発を除く) 0.72倍 有効求人12,118件 ÷ 有効求職16,925人
全職業の平均 1.01倍 有効求人2,020,228件 ÷ 有効求職2,002,441人

同じ「製造技術者」で、約2.5倍の差があります。

開発は1倍超え、開発以外は1倍割れ

開発は1.81倍で、全職業の1.01倍を上回っています。求人のほうが多い状態です。

一方、開発を除く製造技術者は0.72倍。1倍を下回っており、求人1件に対して約1.4人が探しています。

当サイトが確認した20職業のうち、1倍を下回っているのは4職業だけです。開発を除く製造技術者はその1つに入ります。

  • 建設躯体工事従事者 7.85倍
  • 土木作業従事者 5.97倍
  • 保安職業従事者 5.85倍
  • 建築・土木・測量技術者 4.96倍
  • 建設・採掘従事者 4.80倍
  • 機械整備・修理従事者 3.81倍
  • 介護サービス職業従事者 3.70倍
  • 医療技術者 2.92倍
  • 自動車運転従事者 2.42倍
  • 接客・給仕職業従事者 2.30倍
  • 社会福祉専門職業従事者 2.28倍
  • 飲食物調理従事者 2.19倍
  • 営業職業従事者 2.01倍
  • 保健師,助産師,看護師 1.86倍
  • 製造技術者(開発) 1.81倍
  • 情報処理・通信技術者 1.33倍
  • 製造技術者(開発を除く) 0.72倍
  • 会計事務従事者 0.56倍
  • 事務従事者 0.35倍
  • 一般事務従事者 0.28倍
  • 職業計(全体) 1.01倍
職業別の有効求人倍率。厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年6月分)参考統計表」(令和8年6月/常用・パート含む/全国計)。2026-08-13に当サイトが確認。

前年比の向きは逆になっている

もう1つ、方向が食い違っている点があります。

職業有効求人倍率有効求人 前年同月比倍率 前年同月差
製造技術者(開発)1.81倍-0.1%-0.01
製造技術者(開発を除く)0.72倍+2.9%+0.02
情報処理・通信技術者1.33倍-5.7%-0.16
建築・土木・測量技術者4.96倍-0.7%-0.02
医療技術者2.92倍+4.3%+0.06
技術者系の職業。厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年6月分)参考統計表」(令和8年6月)。

倍率が低いほうの「開発を除く」が+2.9%で、この表の中では唯一求人が増えています。倍率が高いほうの「開発」は-0.1%でほぼ横ばいです。

倍率の高低と、増減の向きは別の話です。 水準が低いほうが動いている、という組み合わせもあります。

求人の絶対数はどちらも少ない

見落としやすい点として、この2区分は求人の数そのものが小さいことを挙げておきます。

  • 製造技術者(開発):15,132件
  • 製造技術者(開発を除く):12,118件
  • 情報処理・通信技術者:51,768件
  • 建築・土木・測量技術者:59,378件

同じ技術者系でも、建築・土木・測量は3.9倍の求人数があります。

倍率が1倍を超えていても、母数が小さければ選択肢の数は限られます。倍率と求人数は分けて見る必要があります。

「安定」という言葉を分けて考える

この統計で言えるのは需給の比だけです。そのうえで整理すると、次のようになります。

  • 開発職なら、求人のほうが多い状態です。 ただし求人数は15,132件で、多い部類ではありません
  • 開発以外の製造技術者は、求職者のほうが多い状態です。 「技術職だから」という理由だけで需給が緩いわけではありません
  • どちらも雇用の安定性(解雇されにくさ、勤続年数)を測った数字ではありません。 この統計に、その情報は含まれていません

「メーカーの技術職は安定」という説明は、どちらの区分を指しているかで当たり外れが変わります。

この検算の限界

  • ハローワークの数字です。 製造業の技術職は転職サービス経由の求人も相当あると考えられ、市場全体を表すものではありません
  • 「開発」と「開発を除く」の線引きは統計上の区分です。 実際の職務内容がこの2つに綺麗に分かれるとは限りません
  • 倍率は求人の中身を反映しません。 給与、企業規模、勤務地、求められる経験は含まれていません
  • 1か月分の断面です

まとめ

  • 製造技術者(開発)は1.81倍、製造技術者(開発を除く)は0.72倍。同じ区分名の中で約2.5倍開いています
  • 開発を除くほうは1倍を下回り、求人1件に約1.4人が探しています
  • 前年比では、倍率の低い「開発を除く」のほうが求人が増えています(+2.9%)
  • 求人数はどちらも小さく、建築・土木・測量技術者の59,378件とは規模が違います

数字は令和8年6月分(2026-07-31公表)を、2026-08-13に確認したものです。全職業の一覧は職業別の有効求人倍率にあります。

出典

  1. 一般職業紹介状況(令和8年6月分)参考統計表 (2026-08-13 閲覧)
  2. 一般職業紹介状況(職業安定業務統計) (2026-08-13 閲覧)

最終更新:2026-08-13

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