「看護師は引く手あまた」を、公的データで検算する

筆者は看護職ではありません。本記事は厚生労働省が公表している統計と、当サイトが集計した報告値を整理したものです。 このページに広告は掲載していません(広告掲載方針)。

「看護師は資格職だから引く手あまた」「どこでも働ける」という説明はよく見かけます。

厚生労働省が毎月公表している職業別の有効求人倍率で確かめました。

保健師,助産師,看護師 1.86倍 有効求人98,238件 ÷ 有効求職52,925人
全職業の平均 1.01倍 有効求人2,020,228件 ÷ 有効求職2,002,441人

1.86倍でした。 全職業の1.01倍に対して約1.8倍なので、求人のほうが多い状態なのは事実です。

ただし、他の職種と並べると上位ではありません。

医療・介護の中でも高いほうではない

  • 建設躯体工事従事者 7.85倍
  • 土木作業従事者 5.97倍
  • 保安職業従事者 5.85倍
  • 建築・土木・測量技術者 4.96倍
  • 建設・採掘従事者 4.80倍
  • 機械整備・修理従事者 3.81倍
  • 介護サービス職業従事者 3.70倍
  • 医療技術者 2.92倍
  • 自動車運転従事者 2.42倍
  • 接客・給仕職業従事者 2.30倍
  • 社会福祉専門職業従事者 2.28倍
  • 飲食物調理従事者 2.19倍
  • 営業職業従事者 2.01倍
  • 保健師,助産師,看護師 1.86倍
  • 製造技術者(開発) 1.81倍
  • 情報処理・通信技術者 1.33倍
  • 製造技術者(開発を除く) 0.72倍
  • 会計事務従事者 0.56倍
  • 事務従事者 0.35倍
  • 一般事務従事者 0.28倍
  • 職業計(全体) 1.01倍
職業別の有効求人倍率。厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年6月分)参考統計表」(令和8年6月/常用・パート含む/全国計)。2026-08-13に当サイトが確認。

同じ医療・介護の領域で比べると、次のようになります。

  • 介護サービス職業従事者:3.70倍
  • 医療技術者:2.92倍
  • 保健師,助産師,看護師:1.86倍

看護師は、この3つの中で最も低いという結果です。介護の3.70倍と比べると、およそ半分の水準になります。

建設躯体工事従事者の7.85倍と比べれば、4分の1以下です。

「引く手あまた」という言葉から受ける印象と、倍率の順位は必ずしも一致しません。

直近1年はほぼ横ばい

対前年同月比も見ておきます。

項目保健師,助産師,看護師全職業
有効求人+0.4%-3.4%
有効求職+0.9%+0.6%
有効求人倍率の差-0.01ポイント-0.04ポイント

求人が+0.4%、求職者が+0.9%で、どちらもほとんど動いていません。 倍率の下がり方も-0.01ポイントと小さく、全職業(-0.04ポイント)より安定しています。

急に増えても減ってもいない、というのが直近の状況です。「売り手市場が加速している」という説明も、この数字とは合いません。

転職サービス側のデータは、ほとんど公開されていません

もう1つ、看護に特有の問題があります。

職種 確認した事業者 公表あり 公表なし 公表率 6か月以内の離職
看護師、准看護師 10社 3社 7社 30.0% 6.5%
施設介護の職業 17社 6社 11社 35.3% 22.6%
厚生労働省 人材サービス総合サイト(令和8年8月1日現在/2026年8月13日確認)。「6か月以内の離職」は公表している事業者の合計値から当サイトが計算。

当サイトが看護分野の紹介事業者を確認したところ、離職者数を公表しているのは10社中3社でした。介護(17社中6社)よりさらに低い割合です。

つまり、看護師向けの転職サービスを数字で比較しようとしても、材料がほとんどありません。

公表している3社の合計では6か月以内の離職が6.5%で、保育や介護(いずれも22.6%)より低い数字が出ています。ただし3社しかないため、看護領域を代表する数字とは言えません。参考値です。

この検算の限界

  • ハローワークの数字です。 看護師の転職は民間の紹介サービス経由が多いと考えられるため、市場全体を表すものではありません
  • 「保健師,助産師,看護師」は3職種をまとめた区分です。 准看護師や、病棟・訪問・クリニックといった働き方の違いは分かりません
  • 倍率は求人の中身を反映しません。 夜勤の有無、給与、勤務地は含まれていません
  • 離職者数は事業者の自己申告で、公表3社のみの値です

まとめ

  • 看護師(保健師,助産師,看護師)の有効求人倍率は1.86倍。全職業の1.01倍より高い水準です
  • ただし介護3.70倍、医療技術者2.92倍より低く、医療・介護の中では上位ではありません
  • 直近1年は求人+0.4%、求職+0.9%でほぼ横ばいです
  • 看護分野の紹介事業者は10社中3社しか離職者数を公表しておらず、サービス比較の材料が乏しい状態です

数字は有効求人倍率が令和8年6月分(2026-07-31公表)、報告値が令和8年8月1日現在です。いずれも2026年8月13日に確認しました。

出典

  1. 一般職業紹介状況(令和8年6月分)参考統計表 (2026-08-13 閲覧)
  2. 職業紹介事業所検索(詳細検索:023 看護師、准看護師/全国/令和8年8月1日現在) (2026-08-13 閲覧)
  3. 一般職業紹介状況(職業安定業務統計) (2026-08-13 閲覧)

最終更新:2026-08-13

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