「介護は人手不足だから転職しやすい」を、公的データで検算する

筆者は介護の仕事をしていません。本記事は厚生労働省が公表している統計と、当サイトが集計した報告値を整理したものです。 このページに広告は掲載していません(広告掲載方針)。

「介護は人手不足だから、転職しやすい」という説明はよく見かけます。

これは2つの別々のことを1つにまとめた言い方です。分けて確かめました。

  • 求人はどれくらい多いのか → 厚生労働省の有効求人倍率で分かります
  • 入ったあとどうなるのか → 紹介事業者が報告している早期離職者数から見当がつきます

順に見ていきます。

求人は、たしかに多い

介護サービス職業従事者 3.70倍 有効求人199,693件 ÷ 有効求職54,010人
全職業の平均 1.01倍 有効求人2,020,228件 ÷ 有効求職2,002,441人

介護サービス職業従事者の有効求人倍率は3.70倍。全職業の1.01倍に対して、約3.7倍の水準です。

求職者1人に対して求人が3.7件ある計算になります。「求人が多い」という部分は、数字のうえで正しいと言えます。

  • 建設躯体工事従事者 7.85倍
  • 土木作業従事者 5.97倍
  • 保安職業従事者 5.85倍
  • 建築・土木・測量技術者 4.96倍
  • 建設・採掘従事者 4.80倍
  • 機械整備・修理従事者 3.81倍
  • 介護サービス職業従事者 3.70倍
  • 医療技術者 2.92倍
  • 自動車運転従事者 2.42倍
  • 接客・給仕職業従事者 2.30倍
  • 社会福祉専門職業従事者 2.28倍
  • 飲食物調理従事者 2.19倍
  • 営業職業従事者 2.01倍
  • 保健師,助産師,看護師 1.86倍
  • 製造技術者(開発) 1.81倍
  • 情報処理・通信技術者 1.33倍
  • 製造技術者(開発を除く) 0.72倍
  • 会計事務従事者 0.56倍
  • 事務従事者 0.35倍
  • 一般事務従事者 0.28倍
  • 職業計(全体) 1.01倍
職業別の有効求人倍率。厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年6月分)参考統計表」(令和8年6月/常用・パート含む/全国計)。2026-08-13に当サイトが確認。

参考までに、よく「人手不足」と言われるITエンジニア(情報処理・通信技術者)は1.33倍です。介護のほうが2倍以上高いことになります。

ただし「続けやすい」かは別の話です

ここからが本題です。

有効求人倍率は求人と求職者の数の比であって、入ったあとのことは何も表しません。そこで別のデータを見ます。

有料職業紹介事業者は、紹介した人のうち6か月以内に離職した人数を厚生労働省へ報告することになっています。当サイトが介護分野の事業者を確認したところ、公表している事業者の合計では次のようになりました。

職種 確認した事業者 公表あり 公表なし 公表率 6か月以内の離職
施設介護の職業 17社 6社 11社 35.3% 22.6%
保育士・幼稚園教員 25社 21社 4社 84.0% 22.6%
厚生労働省 人材サービス総合サイト(令和8年8月1日現在/2026年8月12〜13日確認)。「6か月以内の離職」は公表している事業者の合計値から当サイトが計算(離職者数 ÷ 無期雇用の就職者)。
無期雇用で就職した人のうち、22.6%が6か月以内に離職しています。

比較として、当サイトがIT・コンサル領域の事業者5社を同じ方法で集計した値は1.7%でした。桁が違います。

つまり、こうなります。

  • 入口は広い(求人倍率3.70倍)
  • 6か月以内に辞める人は他の領域より明らかに多い(22.6%)

「転職しやすい」を「就職先が見つかりやすい」の意味で使うなら正しく、「入ってから続けやすい」の意味で使うなら、この数字とは合いません。

この離職率をどう受け取るか

3点、正確に書いておきます。

1. 個々の事業者の良し悪しではありません

保育・介護の現場で早期離職が起きやすい構造があるなら、紹介した側の努力とは別のところで数字が動きます。紹介会社を責める材料にはなりません。

2. 数字は事業主全体の値です

就職者数・離職者数は、その会社が扱う全職種の合計です。介護に限った数字ではありません。職種で分かれているのは手数料実績率だけです。

3. そもそも公表している事業者が少数です

介護分野で離職者数を公表しているのは、当サイトが確認した17社のうち6社でした。保育の21/25社と比べても低い割合です。

22.6%という数字は、公表している6社の合計値です。 公表していない事業者を含めた実態は分かりません。詳細は介護と看護の転職エージェントは、実績をほとんど公表していないにまとめています。

求人が多い状態で、何を見るか

求人の数で困らない領域だからこそ、選ぶ基準を求人数以外に置く必要があります。

公表データで確認できるのは次の3点です。

  1. その紹介事業者が離職者数を公表しているか。 公表していない事業者のほうが多いので、出していること自体が確認できる事実になります
  2. 無期雇用の比率。 介護は有期・短期の紹介も多い領域です。正社員を前提にするなら先に確認したほうが確実です
  3. 手数料実績率。 求職者の負担ではありませんが、事業者ごとに幅があります

具体的な調べ方は転職エージェントを選ぶとき、公表データで確認できる3つのことに書いています。

この検算の限界

  • 有効求人倍率はハローワークの数字です。 民間の紹介サービス経由の求人は含まれません
  • 離職者数は事業者の自己申告です。 国が検証・監査した数字ではありません
  • 就職者と離職者は、同じ人の集団を追跡した値とは限りません。 割合は厳密な定着率ではなく目安です
  • どちらの統計も、求人の中身(給与・勤務地・夜勤の有無)は表しません

まとめ

  • 介護サービス職業従事者の有効求人倍率は3.70倍。全職業(1.01倍)の約3.7倍で、求人が多いのは事実です
  • 一方、介護を扱う紹介事業者の6か月以内離職は22.6%(公表6社の合計)。IT・コンサル領域の1.7%とは桁が違います
  • 「就職先が見つかりやすい」は正しく、「続けやすい」は別の話です
  • 公表しているのは17社中6社だけで、実態の全体像は分かりません

数字は有効求人倍率が令和8年6月分(2026-07-31公表)、報告値が令和8年8月1日現在です。いずれも2026年8月12〜13日に確認しました。

出典

  1. 一般職業紹介状況(令和8年6月分)参考統計表 (2026-08-13 閲覧)
  2. 職業紹介事業所検索(詳細検索:050 施設介護の職業/全国/令和8年8月1日現在) (2026-08-13 閲覧)
  3. 一般職業紹介状況(職業安定業務統計) (2026-08-13 閲覧)

最終更新:2026-08-13

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