「離職率が高い地域がある」を、公的データで検算する
まず、この記事の要点
都道府県別の離職率は宮城県4.6%から福井県3.0%まで、開きは1.6ポイントでした。47都道府県中40が全国3.8%の±0.5ポイント以内です。一方で同じ月の有効求人倍率は、職業で割ると28倍の差がありました。
根拠と詳しい説明へ本記事は総務省統計局の統計ダッシュボード経由で取得した公的統計と、厚生労働省の参考統計表を、当サイトが整理したものです。 このページに広告は掲載していません(広告掲載方針)。
「あの地域は離職率が高い」という言い方をよく見かけます。住んでいる場所によって、仕事の続けやすさが違うという話です。
統計ダッシュボード経由で、都道府県別の離職率を47件すべて取得して確かめました。
差はあります。ただし最も高い宮城県と最も低い福井県で、1.6ポイントです。
上位5と下位5を並べても、離職率の幅は小さいままです
| 上位5 | 離職率 | 下位5 | 離職率 |
|---|---|---|---|
| 宮城県 | 4.6% | 福井県 | 3% |
| 青森県 | 4.5% | 滋賀県 | 3.1% |
| 兵庫県 | 4.4% | 島根県 | 3.3% |
| 宮崎県 | 4.4% | 鳥取県 | 3.3% |
| 沖縄県 | 4.4% | 山梨県 | 3.3% |
並び順で見ると「上位」「下位」がはっきり分かれているように見えます。しかし目盛りを見ると、全体が3%から4.6%の、1.6ポイントの間に収まっています。
47都道府県のうち40が、全国3.8%の±0.5ポイント以内です。つまり、ほとんどの県は全国とほぼ同じ水準にあります。ランキングにすれば順位は必ず付きますが、順位の差がそのまま実感の差になるとは限りません。
離職率が高い10県は、有効求人倍率が低いほうに寄っています
同じデータで、離職率の高い10県と低い10県の有効求人倍率を平均すると、次のようになりました。
| グループ | 離職率の平均 | 有効求人倍率の平均 |
|---|---|---|
| 離職率が高い10県 | 4.32% | 1.01倍 |
| 離職率が低い10県 | 3.31% | 1.28倍 |
離職率が高いグループのほうが、有効求人倍率は低く出ています。
なぜこの向きになるのかは、この2つの数字からは分かりません。時点が4年離れており、調査の対象も違います。辞める人が多いから求人が埋まらないのか、次の職が見つかりにくいから数字に表れているのか、どちらとも言えません。
言えるのは「離職率が高い地域=求人が豊富な地域」ではないという確認までです。
同じ求人倍率でも、地域で割るか職業で割るかで開きが違います
ここが、この記事でいちばん書きたかったところです。
有効求人倍率という同じ指標を、2026年07月という同じ月で、地域で割った場合と職業で割った場合に分けました。
| 割り方 | 最も高い | 最も低い | 開き |
|---|---|---|---|
| 47都道府県で割る | 東京都 1.68倍 | 神奈川県 0.81倍 | 2.1倍 |
| 職業で割る | 建設躯体工事従事者 7.85倍 | 一般事務従事者 0.28倍 | 28.0倍 |
地域で割ると開きは2.1倍、職業で割ると28.0倍です。職業で割ったほうが、地域で割ったときの約14倍の開きになります。
住む場所を変えたときに動く幅より、職種を変えたときに動く幅のほうが大きく出ています。
代表的な職業を並べると、こうなります。
| 職業 | 有効求人倍率 | 有効求人 | 有効求職 |
|---|---|---|---|
| 建設躯体工事従事者 | 7.85倍 | 19,335件 | 2,462人 |
| 介護サービス職業従事者 | 3.70倍 | 199,693件 | 54,010人 |
| 情報処理・通信技術者 | 1.33倍 | 51,768件 | 38,919人 |
| 一般事務従事者 | 0.28倍 | 120,372件 | 425,688人 |
| 職業計 | 1.01倍 | 2,020,228件 | 2,002,441人 |
建設躯体工事従事者は7.85倍、一般事務従事者は0.28倍。介護サービス職業従事者が3.70倍、情報処理・通信技術者が1.33倍で、いずれも職業計の1.01倍を挟んで散らばっています。
離職率の地域差が1.6ポイントに収まっているのに対し、職業別の求人の集まり方はこれだけ違います。ただしこれは「求人の多さ」の話であって、続けやすさの話ではありません。求人が多い職業が働きやすいかどうかは、この数字からは分かりません。
この検算の限界
- 離職率は2022年の値です。有効求人倍率(2026年07月)とは4年ずれています。並べて傾向を見ることはできますが、同じ時点の比較ではありません
- 「離職率」は統計によって定義が違います。分母を就業者に取るか常用労働者に取るか、対象期間をどう区切るかで値が変わります。ここで使ったのは統計ダッシュボード(総務省統計局)が社会・人口統計体系として公表している系列で、別の統計の離職率と直接比べることはできません。また定年・家庭の事情・会社都合といった理由の内訳は、この数字からは分かりません
- 都道府県別と職業別は、同じ月でも数字の作り方が違います。都道府県別の全国値は1.15倍、職業別表の職業計は1.01倍で一致しません。集計区分が異なるためで、「◯◯県の◯◯職の求人倍率」は当サイトの手元のデータでは出せません。この記事で比べているのは、あくまで開きの大きさどうしです
- 県ごとの産業構成を揃えていません。建設業や介護の比率が高い県と、事務職の多い県では、母集団の職業構成そのものが違います。地域差として見えているものの一部は、職業構成の差かもしれません
- 有効求人倍率はハローワークの数字です。転職サービス経由の求人は含まれません。都市部ほど民間サービスの利用が多いとすれば、地域差はこの数字より小さくも大きくもなり得ます
まとめ
- 都道府県別の離職率は全国3.8%。最高の宮城県4.6%と最低の福井県3%で1.6ポイント差です
- 「離職率が高い地域がある」は、順位としては合っています。ただし47都道府県中40が全国の±0.5ポイント以内に収まっています
- 離職率が高い10県の有効求人倍率は平均1.01倍、低い10県は1.28倍。「離職率が高い=求人が多い」という関係にはなっていません
- 同じ月の有効求人倍率を地域で割ると2.1倍、職業で割ると28.0倍の開きでした。地域を見るより、職業ごとの数字を見たほうが差は大きく出ます
数字は統計ダッシュボード(総務省統計局)から2026-09-05に、職業別は一般職業紹介状況(令和8年6月分)参考統計表から2026-08-13に取得したものです。どちらも更新される統計のため、当サイトも定期的に取り直しています。
出典
- 統計ダッシュボード(総務省統計局) (2026-08-14 閲覧)
- 一般職業紹介状況(令和8年6月分)参考統計表 (2026-08-13 閲覧)
- 一般職業紹介状況(職業安定業務統計) (2026-08-13 閲覧)
最終更新:2026-08-21
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