「ITエンジニアは人手不足」を、公的データで検算する

筆者はITエンジニアではありません。本記事は厚生労働省が公表している統計を確認・整理したものです。 このページに広告は掲載していません(広告掲載方針)。

「ITエンジニアは人手不足」という説明は、転職サイトでもスクールの広告でもよく見かけます。

この主張には、公的な統計で確かめられる部分があります。厚生労働省がハローワークの求人・求職をまとめた「一般職業紹介状況」で、職業別の有効求人倍率が毎月公表されています。

令和8年6月分の数字を確認しました。

情報処理・通信技術者 1.33倍 有効求人51,768件 ÷ 有効求職38,919人
全職業の平均 1.01倍 有効求人2,020,228件 ÷ 有効求職2,002,441人
結論から書きます。「人手不足」は、事務職などと比べれば正しい表現です。ただし他の職種と並べると、ITは上位ではありません。

職業別に並べるとこうなります

  • 建設躯体工事従事者 7.85倍
  • 土木作業従事者 5.97倍
  • 保安職業従事者 5.85倍
  • 建築・土木・測量技術者 4.96倍
  • 建設・採掘従事者 4.80倍
  • 機械整備・修理従事者 3.81倍
  • 介護サービス職業従事者 3.70倍
  • 医療技術者 2.92倍
  • 自動車運転従事者 2.42倍
  • 接客・給仕職業従事者 2.30倍
  • 社会福祉専門職業従事者 2.28倍
  • 飲食物調理従事者 2.19倍
  • 営業職業従事者 2.01倍
  • 保健師,助産師,看護師 1.86倍
  • 製造技術者(開発) 1.81倍
  • 情報処理・通信技術者 1.33倍
  • 製造技術者(開発を除く) 0.72倍
  • 会計事務従事者 0.56倍
  • 事務従事者 0.35倍
  • 一般事務従事者 0.28倍
  • 職業計(全体) 1.01倍
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年6月分)参考統計表」(令和8年6月/常用・パート含む/全国計)。2026-07-31公表、2026-08-13に当サイトが確認。

情報処理・通信技術者の1.33倍は、全職業の1.01倍の約1.3倍です。平均より高いのは事実です。

一方で、建設躯体工事従事者は7.85倍、介護サービス職業従事者は3.70倍です。ITの1.33倍とは、水準がまったく違います。

「人手不足」という言葉が同じでも、建設や介護の人手不足とITの人手不足では、数字の桁が違うということです。

直近1年では、ITの求人は減っています

これがもう1つの重要な点です。同じ統計には対前年同月比も載っています。

項目情報処理・通信技術者全職業
有効求人-5.7%-3.4%
有効求職+6%+0.6%
有効求人倍率の差-0.16ポイント-0.04ポイント
新規求人倍率の差-0.43ポイント-0.04ポイント

求人が5.7%減り、求職者が6%増えています。 全職業の平均(求人-3.4%、求職+0.6%)と比べても、ITの動きは大きいほうです。

新規求人倍率の下がり方(-0.43ポイント)は、全職業(-0.04ポイント)の10倍以上です。

つまり、「人手不足だから今後も安泰」という言い方は、少なくとも直近1年の数字とは合いません。 倍率は1倍を超えているので求人のほうが多い状態ですが、その差は縮んでいます。

一方で、事務職とは比較になりません

比較の反対側も見ておきます。

一般事務従事者の有効求人倍率は0.28倍です。有効求人120,372件に対して、有効求職が425,688人います。求職者3.5人に対して求人1件という計算になります。

ITの1.33倍と比べると、約4.8倍の差があります。

「事務職からITエンジニアへ」という転職の勧め方をよく見かけますが、求人と求職者の数の比という一点に限れば、方向としては数字と矛盾していません。

この数字が表していること、いないこと

3点、正確に書いておきます。

1. これはハローワークの数字です

一般職業紹介状況は、公共職業安定所(ハローワーク)における求人・求職を集計したものです。転職エージェントや求人サイト経由の求人は含まれません。

ITエンジニアの転職は民間サービス経由が多いと考えられるため、この統計だけで市場全体を語ることはできません。 傾向を見る材料の1つとして扱ってください。

2. 「情報処理・通信技術者」は幅の広い区分です

この区分には、システム開発からネットワーク、運用保守までが含まれます。特定の技術や職種の需給を表す数字ではありません。

たとえば「生成AI関連の求人がどうか」といった粒度は、この統計では分かりません。

3. 倍率は「就職しやすさ」とは違います

有効求人倍率は求人数と求職者数の比です。求人の中身(求められる経験年数、年収、勤務地)は反映されません。

未経験からの就職しやすさを表す数字ではない点は、特に注意が必要です。

自分で確認する方法

この数字は毎月更新されます。

  1. 厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」を開く
  2. 「結果の概要」から最新月の報道発表ページへ進む
  3. 「参考統計表」のPDFを開く

注意点があります。報道発表ページ本文に載っているのは全職業の合計だけです。職業別の内訳は参考統計表のPDFにしか掲載されていません。当サイトもPDFから数字を取っています。

まとめ

  • ITエンジニア(情報処理・通信技術者)の有効求人倍率は1.33倍。全職業の1.01倍より高い水準です
  • ただし建設躯体工事7.85倍、介護3.70倍と比べると、大きく下回ります
  • 直近1年で有効求人は-5.7%、有効求職は+6%。倍率は-0.16ポイント下がりました
  • 一般事務は0.28倍で、ITとは約4.8倍の差があります
  • この統計はハローワーク経由の数字で、民間サービスの求人は含みません

数字はいずれも令和8年6月分(2026-07-31公表)を、2026-08-13に確認したものです。

出典

  1. 一般職業紹介状況(令和8年6月分)参考統計表 (2026-08-13 閲覧)
  2. 一般職業紹介状況(令和8年6月分)について (2026-08-13 閲覧)
  3. 一般職業紹介状況(職業安定業務統計) (2026-08-13 閲覧)

最終更新:2026-08-13

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