「転職する人が多いのは都会」を、公的データで検算する

まず、この記事の要点

転職者比率は全国4.5%。上位は東京・福岡5.4%で、最下位の愛媛・和歌山3.3%とは1.6倍の差でした。ただし求人倍率が高い県ほど転職者比率は低い傾向でした。

根拠と詳しい説明へ

本記事は総務省統計局の統計ダッシュボード経由で取得した公的統計を、当サイトが整理したものです。 このページに広告は掲載していません(広告掲載方針)。

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「転職は都会のほうが盛ん」という言い方があります。求人が多いのだから当然だ、という理屈です。

総務省の就業構造基本調査で、都道府県別の転職者比率(就業者に占める、過去1年間に転職した人の割合)を確認しました。

全国 4.5% 2022年の就業構造基本調査
最も高い:東京都 5.4% 全国より0.9ポイント高い
最も低い:愛媛県 3.3% 最高との差は約1.6倍

上位は東京都・福岡県・沖縄県・神奈川県・大阪府。たしかに都市部が並びます。

ただし、この記事で書きたいのはその先です。

全国平均を上回るのは47都道府県中9つだけ

上位5転職者比率下位5転職者比率
東京都5.4%愛媛県3.3%
福岡県5.4%和歌山県3.3%
沖縄県5.3%徳島県3.4%
神奈川県5.1%高知県3.5%
大阪府4.9%鳥取県3.5%
2022年の就業構造基本調査。統計ダッシュボード(総務省統計局)経由で2026-09-05に当サイトが取得。

全国平均4.5%を上回るのは9都府県だけです。残る38道県は平均を下回ります。

平均は人口の多い地域に引っ張られるので、「多くの県は平均より低い」という状態が起きます。自分の県を全国平均と比べると、多くの人は「うちは少ない」側に入ります。

求人倍率が高い県ほど、転職者比率は低い

ここが直感と逆になった点です。

同じデータで有効求人倍率と並べると、次のようになりました。

グループ有効求人倍率の平均転職者比率の平均
有効求人倍率が高い10県1.43倍3.96%
有効求人倍率が低い10県0.93倍4.39%
有効求人倍率は2026年07月の原数値。転職者比率は2022年。統計ダッシュボード(総務省統計局)経由。
求人倍率が高い県のほうが、転職者比率は低く出ています。

「求人が多いから転職しやすい」という説明だけでは、この向きは説明できません。

なぜそうなるかは、この数字からは分かりません

考えられることは複数あります。

  • 求人倍率が高い県は人手不足が深刻で、そもそも働く人が少ない(分母が小さい)
  • 都市部は産業構造が多様で、同じ地域内で移りやすい
  • 有効求人倍率はハローワークの数字なので、民間サービスの利用率が高い都市部では実態を捉えきれていない

いずれも当サイトの推測です。 この2つの数字は調査の時点も対象も違うため、因果を論じる材料になりません。

言えるのは「求人倍率が高い=転職する人が多い、ではない」という事実の確認までです。

当サイトが確認した事業者の許可は、東京労働局に寄っています

ここまではハローワークの数字です。民間の転職サービス経由の求人は入っていません。では民間側はどこにあるのか、当サイトが厚生労働省の人材サービス総合サイトで報告値を確認した68社の許可番号で数えました。

有料職業紹介事業の許可番号は「都道府県コード-ユ-連番」の形で、頭2桁は許可を出した都道府県労働局を表します(13=東京、27=大阪)。

13(東京労働局)の事業者 49社 当サイトが確認した68社のうち72%
27(大阪労働局)の事業者 8社 同12%
許可を出した労働局の数 12局 東京・大阪を除く10局は1〜2社ずつ

68社の許可は12の労働局に分かれ、うち49社(72%)が東京、8社が大阪でした。転職者比率の差が最大でも約1.6倍だったのに対して、サービスを出す側の登録は東京に寄っています。

ただし読み取れるのはそこまでです。3点補足します。

  • 当サイトが確認した68社の話です。 全国の職業紹介事業者を網羅したものではありません
  • 許可は事業主の主たる事業所を管轄する労働局が出します。 求人や就職者がどの県にあるかを示す数字ではありません
  • 報告値も全国の合計です。 68社のうち就職者数と無期雇用の両方を報告しているのは67社で、合計は就職者385,788人・うち無期雇用353,279人(91.6%)。県別の内訳は公表されていません

この検算の限界

  • 転職者比率は2022年の調査です。 就業構造基本調査は5年ごとで、有効求人倍率(月次)とは時点が3年以上ずれています。並べて傾向を見ることはできますが、同じ時点の比較ではありません
  • 「転職者」の定義は調査によります。 ここでは就業者のうち過去1年間に前職を辞めて転職した人を指します。転職活動をしたが決まらなかった人は含まれません
  • 有効求人倍率はハローワークの数字です。 転職サービス経由の求人は含まれません
  • 県ごとの産業構成を揃えていません。 製造業が多い県と観光業が多い県では、転職の起きやすさがそもそも違います

まとめ

  • 転職者比率は全国4.5%。最高の東京都5.4%と最低の愛媛県3.3%で約1.6倍の差があります
  • 上位は都市部が並び、「都会のほうが転職が多い」は方向としては合っています
  • ただし全国平均を上回るのは9都府県だけで、38道県は平均を下回ります
  • 有効求人倍率が高い10県の転職者比率は3.96%、低い10県は4.39%。求人が多い県ほど転職者比率が高い、という関係にはなっていません
  • サービスを出す側は東京に寄っています。当サイトが報告値を確認した68社の許可は49社(72%)が東京労働局でした。ただし許可の所在は、求人や就職者がどの県にあるかを示すものではありません

数字は統計ダッシュボード(総務省統計局)から2026-09-05に取得したものです。この統計は毎月更新されるため、当サイトも定期的に取り直しています。

出典

  1. 統計ダッシュボード(総務省統計局) (2026-09-05 閲覧)
  2. 就業構造基本調査 (2026-08-14 閲覧)
  3. 職業紹介事業所検索(人材サービス総合サイト) (2026-08-13 閲覧)

最終更新:2026-09-14

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